こんばんは。きょんすけです。夏休みですね。
暑い関東から北へ帰省してきたら涼しいを通り越して寒くてびっくりしてます。
最近というか、今年度私は使役や受身などのヴォイス(態)、あと他動化/自動化あたりがアツいです。その話をしたいなぁ!と思うのですが1つの記事にすると長くなりそうだし、1つにかけるほど綺麗に書けない気がするので、複数記事でのんびり書こうと思ってます。
今日は「使役は面白いぞ!」って話です。
☆そもそも使役とは?
(1)a. 太郎が 次郎を なぐる。
b.花子が 太郎に 次郎を なぐらせる。
(1)a.がいわゆる普通の文(基本文)で、b.が使役文です。
使役文と基本文、起こっている事態そのものは、「太郎が次郎を殴る」事でかわりません。
使役では、基本文にはいない人物(花子ポジション)が新しく現れます。花子ポジは、基本文の事態の成立に影響を与える主体(人物)として、使役文の主語で現れます。絵にするとこんな感じです。
文の形で言うと、
使役文で新しく登場する使役主体(花子ポジ)が 使役:ガ格。
実際に行動を起こす動作主体(太郎ポジ)が 基本文:ガ格 → 使役:ヲ/ニ格
そして事態で起こる動作(なぐる)が 語幹+ (s)aseru になります。
(次郎くんはあまり関係ないし、自動詞だったらそもそもいない)
ここまでで、ざっくり使役とは何か?を話したのですが、私はここでまず思います。
「なぜわざわざ、そんな文の操作をするの?」
起こっている事態自体は変わらないのに、なぜ登場人物を増やすのか?
関係が増えたらめんどくさいじゃないか!三角関係じゃないと面白みがないのか?
人間よくわかんないなぁ。と思うわけです。
まぁ、その反面、絵に描いて分かるように、文の表す世界が基本文→使役文で広くなっています。その分情報量は多いのだろうなぁ。情報が多いとより複雑なことを伝える事ができるのだろうなぁ。というのもなんとなくわかります。
一文の情報量が増える事は、一文でたくさんの事を伝えられるという良い面もあるけども、複雑な分伝わらないかも知れないというリスクもあると思います。
そのリスクがありながら、使役を使う人間の意図、心理とは?というところが面白いポイントです。
☆使役にも色々ある
しかも、同じ「使役」という文の操作だとしても意味は複数あると言われています。
(今、手元にある)日本語文法の教科書、『レベルアップ日本語文法』(許・宮崎2013)の場合、使役は「強制」「許可」「誘発」「責任」の4つの意味があるとしています。それぞれの例文は以下の通りです。
(2) 先生は、宿題を忘れた私を廊下に立たせた。(強制)
(3) 父親は、心配のあまり、娘を海外旅行に行かせなかった。(許可)
(4) 私が友達に急に声をかけて、友達をびっくりさせた。(誘発)
(5) 電車が遅れて20分も待たせてしまいました。本当にすみません。(責任)
それぞれの違いをさっくりと言うと、
強制と許可は、使役主体(花子ポジ)がやらせること事態はほぼ一緒です。ただし、動作主体(太郎ポジ)の気持ちを考えてやらせている→許可、気持ちを無視している/考えていない→強制、になっています。
誘発は使役主体の行為と動作主体の行為の繋がりが、強制・許可よりも強いです。(4)の場合、使役主体の「友達に急に声をかける」が動作主体の「友達がびっくりする」事態を直接的に作ったと言えます。
強制・許可と誘発は客観的に行為になにかしらの関係がありますが、責任はそれとはまた別の観点で使役を使用します。この「責任」に相当する使役を、有責的使役文と呼ぶのですが、場合によっては(6)のように、使役主体と動作主体に関係がない文も作れます。
(6) 私は 母を 死なせた。
(6)の文、「いやいや、あなたのせいじゃないよ・・・しょうがないよ・・・」って声を掛けたくなりそうですよね(?)。実際、私が母を死に至らしめたとしたら、「殺した」を使えよ、とも思います。
このように、使役文を作ってみたよ!と同じ操作をしても、使役文が伝える事ができる文の意味は色々あるらしいのです。ある使役文を見ても読み取れる可能性の選択肢はとりあえず4つあるんですよ。そこから正しく意味を汲み取れる人間すごくないですか。それぞれの意味はどんな意図で使われてるんでしょうね、そして読み取り手の人間はどうやってどの意味である、と判断してるんでしょう。
また(5)、(6)のように、客観的には関係がない文にも使役は使えるようです。そこで使役を使う意図とは?その文の操作の裏にはどんな気持ちが含まれているんだろう?
あともう少し広い目でみると、使役は動作を「他動詞化させる」操作と見る事ができます。他動詞化ってなんだ?動詞にも他動詞や自動詞ってないっけ?それらと何が違うんだろう?
ハテナはあちこちに散らばってますね。おいしい、おいしい。
たくさんひろげたハテナ達を、また今度少しずつお話ししたいです。
今回は以上!
【参考文献】
富田英夫(2007)『教える前に確認しよう! 日本語文法の要点』
日本語記述文法研究会(2009)「第4部ヴォイス」『現代日本語文法②』
許明子・宮崎恵子(2013)『レベルアップ日本語文法』くろしお出版
松岡弘(2000) 30.立場を表す表現ーヴォイス(受身、使役、使役受身)ー『初級を教える人のための日本語文法ハンドブック』